地球温暖化などの環境問題や化石資源の枯渇といったエネルギー問題を解決し、持続可能な社会を実現するために、再生可能エネルギーを利用した発電が注目されている。再生可能エネルギーは電力の供給が不安定であるため、実用化には電気エネルギーを貯めておき、必要に応じて取り出して利用することが必要である。そこで、電気エネルギーと化学エネルギーを直接変換できる電気化学反応が注目されている。 我々は、貯蔵性や輸送性に優れた物質としてグリコール酸に注目し、アナターゼ型のTiO2粒子を電極触媒に用いることで電気化学的還元反応によって二価のカルボン酸であるシュウ酸から一価のアルコールであるグリコール酸が高効率かつ高選択的に生成できることを報告している[1]。我々は、本反応での触媒活性を向上させるため、結晶面と形状が制御されたアナターゼ型のTiO2粒子を調製し、その構造とシュウ酸からグリコール酸への電気化学反応の触媒特性の関連について研究した。 まず、ソルボサーマル法によって、 {101} 面や {001} 面などの特定の結晶面が露出し、形状を制御したアナターゼ型のTiO2粒子を合成した。粉末X線回折 (XRD) 測定によって、得られた粒子の構造はアナターゼ型のTiO2粒子であることを確認し、透過型電子顕微鏡 (TEM) 観察、走査型電子顕微鏡 (SEM) 観察から、得られた粒子の形状が制御されていることを確認した(図1)。 形状制御されたTiO2粒子上での電気化学的シュウ酸還元反応における生成物分布を調べたところ、グリコール酸などの生成物選択性は、粒子形状に依存することがはじめてわかった。さらに、TiO2粒子の物性と反応選択性との詳細な検討の結果、TiO2粒子の触媒特性は、結晶面指数ではなく、粒子の頂点や伝導帯のエネルギー準位と相関していることが明らかとなった。
参考文献
[1]Watanabe, R. M. Yamauchi, M. Sadakiyo, R. Abe, T. Takeguchi, Energy Environ. Sci., 8, 1456 (2015)
山内グループ
グループリーダー:山内美穂
yamauchi@i2cner.kyushu-u.ac.jp