アンモニアは、肥料の原料としてのみならず、CO2を排出しないクリーンな燃料としても着目されている。現在、Fe触媒を用いるハーバー・ボッシュ法によりアンモニアが工業的に生産されているが、天然ガス改質による水素製造工程において大量にCO2が排出されることや高温・高圧の反応条件を維持するための膨大なエネルギー消費されることが問題になっている。他方、Ru触媒は比較的低温・低圧で高いアンモニア合成活性を示すが、水素分圧が高い条件では水素被毒のため不活性化するという欠点がある。もし、Ruに水素との親和性の小さいFeを固溶させることができれば、水素被毒耐性を抑制できると期待される。われわれは、組成の異なるRu-Feナノ合金アンモニア合成触媒を作製し、その物性と触媒特性を系統的に調べた。
作製したMgO担持 Ru50Fe50触媒は、同一粒子内にRuおよびFe原子が均一に分布していることが明らかとなった(図1)。作製したRu50Fe50およびRuを用いたアンモニア合成活性の温度依存性を調べた。STEM像を用いて求めたRuおよびRu50Fe50ナノ粒子の表面積を用いて触媒の単位面積当たりの触媒回転頻度は、Ru50Fe50上では、Ru 上よりも約2.5倍もの高い活性を示すことがわかった。次に、異なる窒素と水素の分圧における触媒試験を行い、N2およびH2に対する反応次数を求めると、N2に対しては、両触媒上で正の次数が得られたが、H2に対する次数は、Ru/MgO上では負になるもの、Ru50Fe50上では、正となることが明らかとなった。これは、Feの導入により、Ru上での水素被毒が抑制されることを示している。このような反応次数の変化は、合金化による電荷移動および新規の反応サイトの出現によるものと考えられる(Phys. Chem. Chem. Phys. 2018)。
山内グループ
グループリーダー:山内美穂
yamauchi@i2cner.kyushu-u.ac.jp